コラム

2010/09/29

岐阜新聞「樹齢100年超の桧 伐採の場で思う」白木 昭嘉

「祖父の残した山の木を新しく建てる家に使いたい」。設計中の30代の施主ご夫妻から相談を受けました。山の所在地は、中津川の加子母。東濃ひのき産地として名高い地域です。そこで代々ご親戚が山守をしつつ、製材業を営まれているとのことで、木の切り出しから、施主ご夫妻が立ち会う提案があり、私も立ち会うことになったのです。
 

木を切り出す作業を見るのは、常日ごろ、仕事で木材は見慣れている私にも、はじめての経験でした。長靴にヘルメットを携え山へ入ると、樹齢100年を優に超える立派な桧たちが静かに出迎えてくれました。ご親戚の製材所の方が、切り出す木を選んでくださったところで、杣(そま)と呼ばれる切り出し職人が山へ。そして木を倒す方角や距離を見定め、お神酒と塩で木を清めた後、チェーンソーを挽きます。切り出した大木の切り株に、新たな命がつながるようにと倒された木の先端にあった細枝を差し込む儀式を教えてくれました。大切に育てられた立派な桧たち。残念ながら20年前の10分の1にも満たない価格で取引されているのが現実とのこと。
下草刈り、枝打ち、山というのは、想像以上の重労働でありますが、エネルギーに満ち、気持ちも不思議と落ち着きます。
私たちは今、切実に衣食住の国内自給率を見直す時期にたたされている-。価格競争ではじき出されてしまった国産材を、私たちの世代が、もう一度しっかり見つめるべき時期がきていると、意識を強めた一日でした。

 

岐阜新聞 住まいの心得-建築家のひとりごと-
2010年9月29日水曜日 掲載

 

らいふくれよん建築家のコラムが、岐阜新聞に毎月掲載されます。日ごろ建築家が設計するうえで感じているコト、心得をコラムとして連載しています。岐阜新聞を目にした際はぜひご覧になって下さい。

| カテゴリ: |
PAGE TOP