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平成22年度第4回サスティナブル住宅賞国土交通大臣賞受賞「松河戸の家」

笹野空間設計の笹野直之先生作品の「松河戸の家」が平成22年度第4回サスティナブル住宅賞 国土交通大臣賞を受賞されました。

笹野先生の松河戸の家について書籍「Life Crayon」からの記事を一部掲載します。

 

自然エネルギーを最大限に利用した環境に優しい住まい

 

施主の中部大学工学部建築学科准教授の田中英紀さんは、建築環境設備が専門で、環境設備の専門家と建築家というコンビネーションによってできあがったこの「松河戸の家」には、さまざまな省エネの工夫や設備が取り入れられています。

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一見、デザイン優先のモダン住宅。しかし、その実態は、知恵と工夫、先端技術の導入により健康的で省エネ性に富んだCO2ゼロを叶える家。

庭の芝生や樹木もそのひとつ(*1)。芝生は日射しの照り返しやアスファルトの熱を緩和します。また今後、樹木が成長すれば緑の木陰を通ることで室内に入る風は心地いい涼風となります。

ローテクながら意外に効果が大きいのがヒサシ(軒)(*2)。斜めの大屋根はリビングの窓にかかるヒサシの役割を果たし、夏の強い日射しを遮断します。太陽の位置が低い冬はリビングの奥まで陽が射し込むように計算されています。

そして、独自のアイデアが生かされた換気システム。基礎のボイドスラブを利用したクール&ヒートチューブシステム(*3)で、地熱を利用した24時間換気を実施しており、夏は地中で冷やされた空気が和室とLDKとの段差部分から、冬は暖められた空気がキッチン脇の天井から取り入れられます。

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ちなみに7月の外気温が32度の時、吹き出し口から出る空気の温度は23度だったそう。その換気に多大な役割を果たすのが、北側のハイサイドライト(*4)。換気システムで送り込まれた、あるいは各所の空気窓から入った空気は家の中を通り抜けて、このハイサイドライトから風力や上下温度差を利用して自然に排出されるのです。 tanakatei05.jpg

 

一方、リビングの窓は、遮熱性の高いペアガラスに加え、特注で上部に穴を空けたロールスクリーンを、簡易ダブルスキン(*5)として利用。これも、工費を抑えつつ効果を出す独自のアイデアです。

sasano_tanakatei.jpg 省エネだけではなく、エネルギー創出の設備も完備。太陽光発電システム(*6)と家庭用燃料電池(*7)のダブル発電を導入し、HEMS(ホームエネルギー・マネジメントシステム)(*8)でエネルギー管理を行っています。気になるのはその収支です。  

「冬期のデータはこれからですが、初夏から夏期までの電気代は黒字(※)でした。年間のCO2量はプラスマイナスゼロ、あるいはマイナスでいける計算です」と、田中さん。これまでエコというとガマンのイメージが強かったのですが、この家は、暑い夏も寒い冬もガマンとは無縁。それなのに家計にやさしく環境負荷もぐっと抑えられるのです。

  設備への初期投資は必要ですが、年間光熱費と環境負荷を考えれば高い買い物ではないはず。なによりその快適さは、何物にも変えがたい価値と言えるでしょう。 笹野さんは言います。「エコのための工夫や設備が断片ではなく、建物のデザインと一体化しているのが、この家の最大の特徴。機能性とデザイン性の融合は今回の大テーマでした」 tanaka_tanakatei.jpg

 

 環境設備の専門家と建築家がつくったエコ住宅。それは、機能と美しさ、住みやすさがひとつになり、自然と人間の共生が実感できる家でした。

 

*1 外構の芝生&樹木
芝生が照り返しやアスファルトの熱を軽減。植物の蒸散作用や樹木の木陰を通ることで室内へ涼しい風を送ります。
*2 ヒサシ(軒)
季節毎の太陽の高さを綿密に計算することで、夏は直射日光を室内に入れず、冬は家の奥まで届けます。
*3 クール&ヒートチューブ (地熱利用24時間換気システム)
年間を通して温度が安定している地下にパイプを埋め、そのパイプに通した空気を室内に送る換気方法。夏は冷やされた空気、冬は暖められた空気を取り込むことで、快適な温熱環境を維持します。この家は、基礎のボイドスラブをチューブとして利用しています。
*4 ハイサイドライト
高所に設けた窓。高低の温度差を利用し、暖まった空気を自然排出することができます。
*5 簡易ダブルスキン
外壁の一部または全面を2重にし、その間の空間を自然換気することで壁面が日射で温められるのを防ぐのがダブルスキン。ガラスを2重にするのが一般的ですが、この家は、上部に穴を空けたロールスクリーンを利用。暖まった空気が穴を通り、ハイサイドライトへと抜けます。
*6 太陽光発電システム
太陽光を電気エネルギーに変換するシステム。この家は、4.7kWを大屋根の傾斜に設置。通気性を確保して熱による発電効率の低下を防ぐため、設置面には等間隔で桟を入れてすき間を作る瓦棒の工法を用いています。
*7 エネファーム
家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの愛称。ガスから水素を取り出し、空気中の酸素と反応させて発電するシステムで、その排熱を利用してお湯も沸かします。
*8 HEMS
ホームエネルギー・マネジメントシステム。エネルギー機器の運転状況や電気・LPガス・灯油・水道の使用量を「見える化」することで、省エネを意識した暮らしをサポートします。

 

-------書籍「Life Crayon vol.1」より

 

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