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2010年6月30日号 岐阜新聞「自然素材活用 快適空間づくり」西 久樹

施主と初めての打合せの時、「食べ物も住まいも同じですね」と語ったT氏の一言が、T邸の設計テーマを決めることになった。
建設市場が大量生産、大量消費の上に成立するようになってから、住まいづくりは工期短縮とクレームの出ない安定した建材を使うことが前提となった。設計行為もその大きな流れの中に組み込まれていき、建築素材の選択に至ってはカタログからの「材料」選択でしかなくなった。こだわりを持つことや自然素材を使うことには、大きな壁ができてしまっている。乗り越えようとすると特注品となり、コスト面からも住まいへの思いを断ち切らねばならない。商品としての住宅が席巻し、命の居場所たる住まいが見えなくなっている。
私たちが目指すものは、人間環境重視の立場で快適な新しい空間を作ることだ。しかし、現在の大量生産、大量消費の恩恵を否定しては、現代の建築は成立しないだろう。最先端技術を駆使しつつも昔の知恵を見直し、見慣れた材料、身近な技術を有効に活用していく術を探っていくというしなやかさが求められており、そこに私たちの務めがあると思っている。そこでT邸の設計では、
◇敷地環境の整備=炭素埋没改良法を行う
◇ランドスケープ計画の実施=在来種をベースに自然な景をつくる
◇室内環境の整備=自然素材を使用する
◇みんなでつくる=左官職人の指導により土壁を塗る
―を基本的な方針とした。

 

岐阜新聞 住まいの心得-建築家のひとりごと-
2010年6月30日水曜日 掲載

らいふくれよん建築家のコラムが、岐阜新聞に毎月掲載されます。日ごろ建築家が設計するうえで感じているコト、心得をコラムとして連載しています。岐阜新聞を目にした際はぜひご覧になって下さい。

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